「居宅等における医療の確保に関する事項」の見直しについて、厚生労働省へ意見を提出しました。

あいち診療会では20年の在宅医療への取り組みの中で、在宅医療における看護師の役割を非常に高く評価しています。入院医療が病気の治療のために生活を中 断して受ける医療であるのに対して、在宅医療は生活の中に医療サービスを持ちこむものです。生活過程を整えることを専門とする看護師が活躍するのは自然な 成り行きと言えるでしょう。

 

私たちの提案は

  1. 在宅医療にナースコール制を導入する。
  2. 医療連携のキイに訪問看護ステーションを活用する。
  3. 病院病床の一部をナーシングホームとして活用する。

の3つを柱としています。

1) 在宅医療にナースコール制を導入する。

※画像をクリックすると拡大して表示されます。

あいち診療会では図1のように患者さんからの連絡は訪問看護ステーションが受けるシステムを取っています。

あざいリハビリテーションクリニックの在宅医療における定期外の患者家庭からの連絡への対応の実績は図2の通りです。年間73名の対象者 (1ヵ月に約50名)に対して124回 の臨時出動がありました。(看護師の電話のみの対応は集計に入っていません。)この出動のうち医師が実際に往診したのは死亡診断の9回を含めて21回だけ でした。電話でその場で指示を出したのが22回ありますがその他の81回はその場で医師は何もしていません。

愛知県医師会が00年に在宅療養支援診療所の届け出診療所に対して行ったアンケート調査から算出した往診回数は100人の患者さんあたり1ヵ月に約14回 であり、同じ人数に対する当施設の往診回数は1ヵ月に3.4回と極めて少なくなっています。(図3) これは私たちの訪問看護ステーションが電話の第1連 絡先になっているシステム(ナースコール制)の効果だと考えています。

図4は当法人で担当する患者にどれだけのサービスを提供しているかを時間計算して1週間のうちどれだけ私たちが関わっているかを計算した結果を示していま す。医療関連職が関わる時間は極めて少ない。(あいち診療会のサービス時間から)介護・看護の大半は家族が担っていることは歴然としています。

私たちは在宅でのチーム医療を図5の様に患者家族を中心に置いた形で考えていますが、チームの総合力は患者家族の能力に左右されることになります。患者家族の能力が高ければ高いほど高度の医療を安定して提供する事が可能になります。家庭透析・人工呼吸管理における家族の役割は測り知れないものがあります。

ナースコール制は家族の教育にも力を発揮します。もともと医師と看護師の役割は全く異なり、医師は病気を主な対象とするのに対して、看護師は生活過程を対象とします。医師の役割は家族には荷が重いのですが、看護師の行為の多くは家族が代わって行うことが出来ます。
患者家族が必要とする事の大半が生活過程の調整で解決してしまいます。(往診・医師の指示43、看護師の報告、看護師のみの対応81)患者のコールの大半は看護師で解決可能であり、その解決の過程こそ患者教育の絶好のチャンスです。

ナースコール制は在宅主治医の夜間時間外の肉体的ストレスを大きく減らします。開業医が30人の在宅患者を受け持っても、昼夜合わせて月に1回の臨時出動で対応が可能になるのです。

2) 医療連携のキイに訪問看護ステーションを活用する。

ナースコール制の先には医療連携の容易さが待っています。医師同士の連携には情報共有の面で 課題が山積します。在宅医療の対象者は、生活の中で医療サービスを受けていることから個別性がさ らに強くなっておりその対応には細かな配慮が必要ですが、初診時に時間がかかる様に、普段診察し ていない患者さんについては、その生活から病気までを把握するには多くに時間を必要としますし、 人間関係の出来ていない患者家族との付き合いは危険でさえあります。
しかし訪問看護ステーションをその間に挟むと物事は非常にスムーズになります。(図6)

医師は普段から自分以外が主治医の患者さんの情報を持つ必要はありません。必要になった時には訪問看護ステーションの看護師が同時に動き情報を提供し、初めての患者家族へのつなぎの役割も果たします。患者家族にしても具合悪い時に初めての、自分のことを知らない医師の診察を受けることはストレスですが、なじみの看護師がそれを救うでしょう。

3) 病院病床の一部をナーシングホームとして活用する。

病院には複数の医師が知恵を出し合う必要がある病気、また時々刻々と指示を変えなければいけないような病態の時に力を発揮してもらいたいと思います。
日本の医療制度の中で医師は皆同じ資格をベースとして仕事をしています。しかし開業してベッドを持たなくなると、入院を必要とする治療は行わなくなり、病院でしか行えない検査とも縁が遠くなります。今在宅医療の世界には様々な病態の患者さんが次々に押し出されて入ってきます。

10年以上病院医療から離れた医師にとって在宅医療で行わなければならないことは、もうだいぶ前にやっただけで今はでなくなっていることがたくさんあるのです、私は診療所医師の廃用症候群と言っていますが多くの高齢の医師は能力的に今の在宅医療には対応が出来なくなっているのではないでしょうか。病院の病棟を開放して院外主治医を認め、病院の検査機能の利用を自由にし、病棟管理は看護師にゆだねることを提案します。(それをナーシングホームと言いました。)

医師一人が指示を出せば治療できるような病人は病院主治医に委ねず、診療所医師が治療にあたるべきではないでしょうか。こうして病棟での治療にもあたり続ければ廃用症候群は進行しませんし、病院医師の疲弊も防ぐことが出来るのではないでしょうか。
病院への入退院は医師が、ナーシングホームへの入退院は看護師が判断するほうがよいでしょう。
費用のことを述べませんでしたが、ナースコール制にすることで費用の節約が可能です。しかし、同時にナースコール制を受ける事の出来る訪問看護ステーションを育てなければなりません。

削減する費用の半分程度は、訪問看護ステーションへの加算を検討してください。
これら訪問看護ステーションの機能にさらにショートステイ・デイサービスを付け加えたもの(在宅サービスステーション)・看護外来(外来で看護サービスを提供し、健康維持予防に看護力を発揮させようというもの)など看護サービスを核として医療モデルを図8のように描いています。

介護保険制度の問題

介護保険制度のもとで各種のサービス事業の質をどう担保するかという点で根本的に考え方を変える必要性を訴えます。
保険給付であることから給付が適正に行われることを監視する責任があるとの考えがベースにあり、不当に利益をむさぼったり、劣悪なサービスの提供を行ったりする事業者が出てこないように指導を頻回にしたり、事実関係の報告を事細かに事業所に要求したりしているのが今の考え方かと思われます。
問題は介護保険の中に競争原理が働かないことです。
残念ながら現在のシステムは介護支援専門員を市民が選ぶことが困難な状況が作られています。介護支援専門員間の競争が起こるようなシステムへの返還が必要です。
介護支援事業所に対する給付がもっと高くする必要があります。現行の点数設定では他の事業所から独立しての経営が困難であり、事業所のひも付きからの脱却が困難です。
また高い点数設定はケアマネ希望者の増加につながり競争がおのずと強化されます。
ケアマネの競争は、事業所の選択につながり引いては事業所の競争に結びつくはずです、事業所間の競争が行われれば指導などほとんどしなくても不良業者は淘汰され、役人の仕事も減らせるはずです。

政策提言

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厚生労働省

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